僕は覆髄の時はセラカルを使っています。
直接覆髄も間接覆髄もこれ1本です。
CRみたいにシリンジで出して狙った所に置いて、光照射ですぐ固まるのでほんとに便利です。
もうダイカルは使わなくなりましたね……だって練和しないといけないし操作性悪いし。
ただセラカルって高いんですよね。1本5000円。ダイカルより圧倒的に高い。しかも少量だからすぐ無くなる。
で、高価なものを使う以上気になるのがセラカルの成功率。
要は覆髄が失敗して抜髄や感染根管治療になってしまう確率ですね。
ちょっと気になったので調べてみました
セラカルの成功率が高いと分かる報告例
【方法】対象は2012年7月から2013年6月までの1年間に(医)おぎた小児歯科および(医)せんのんじ小児歯科を受診し,う蝕治療もしくは外傷によって,臨床上明らかな露髄もしくは不顕性露髄が強く疑われた111 名,160症例(直接覆髄49症例,間接覆髄111症例) としました。MTA系覆髄材セラカルLCにて直接覆髄または間接覆髄を行い,その後コンポジットレジン充填 または乳歯冠補綴を行いました。その後2か月から1年程度の経過観察を行い,予後の判定を行いました。
【結果】短期的に不快症状や違和感など単純性歯髄炎な どを疑う症状が確認された症例はなく,術後8か月目に明らかな歯髄炎症状を認めた1症例について抜髄を行い ました。
MTA系覆髄材 セラカルLCの臨床応用報告(1)
荻田匡樹1), 荻田修二1), 安立妙子2), 荻田美紗子3)
1)医/おぎた小児歯科・桑名市, 2)小児歯科あおやま・名古屋市, 3)医/せんのんじ小児歯科・名古屋市
小児歯科学雑誌, 52(1) : 153-153, 2014.
【方法】対象は2012年7月から2014年6月までの2年間に(医)おぎた小児歯科および(医)せんのんじ小児歯科を受診し,う蝕治療もしくは外傷によって,臨床上明らかな露髄もしくは不顕性露髄が強く疑われた251名, 442症例(直接覆髄128症例,間接覆髄314症例)としました。術式については前報告と同様に行い,その後2か月から2年程度の経過観察を行い,予後の判定を行いまし た。
【結果】抜髄・感染根管処置に至った症例は全体のうち3症例と結果は良好でした。
MTA系覆髄材 セラカルLCの臨床応用報告 (2)
荻田匡樹1), 浦田あゆち1), 荻田修二1), 竹本憲夫2), 柳瀬博3), 荻田美紗子4)
1)医 : おぎた小児歯科, 2)わんぱく歯科, 3)やなせ小児歯科, 4)医 : せんのんじ小児歯科
小児歯科学雑誌, 53(1) : 134-134, 2015.
抜髄や感染根管治療になったのは最長2年間で3症例みたいですね。
3/442 = 約0.7%! この成功率は凄い。
乳歯と永久歯の数が書いていないので、どっちがどれだけ差があるとかの話はできませんが、これだけ成功率が高ければ文句無しでしょう。
海外でも
Methods
Symmetrical bilateral primary molars (92) from 46 healthy subjects aged 5–7 years were included in this split-mouth randomised clinical trial. DPC for small non-contaminated pulp exposures using either TheraCal or MTA were randomly performed in symmetrical molars. Thereafter, teeth were restored with amalgam. Clinical and radiographic evaluations were performed at 6 and 12 month follow-ups. Data were analysed using Chi square test at a significance level of 0.05.
Results
At the final follow-up session 74 teeth were available. After 12 months, the overall success rates for MTA and TheraCal were 94.5 and 91.8%, respectively. The difference between outcomes of the two groups was not statistically significant (P > 0.05).
Direct pulp capping in primary molars using a resin-modified Portland cement-based material (TheraCal) compared to MTA with 12-month follow-up: a randomised clinical trial.
Erfanparast L, Iranparvar P, Vafaei A.
European Archives of Paediatric Dentistry. 2018 Jun;19(3):197-203. doi: 10.1007/s40368-018-0348-6. Epub 2018 May 16.
イランの大学病院の小児歯科で行われた報告がありました。
DPCはDirect pulp cappingで直接覆髄の略語ですね。
5〜7歳の子供46人の両側乳臼歯92本を直接覆髄。
6ヶ月後と12ヶ月後でレントゲンおよび臨床所見を確認し、状態をチェックしてます。
その結果、セラカルは91.8%の成功率だったとのこと。
しかもカイ二乗検定ではMTAとの有意差は認めらなかったとのことなので、MTAの方が直接覆髄において優れているとも言い切れないようですね。
ランダム化比較試験なので、まずまずの信用性はあるのかな?
セラカルよりも高くて操作性の悪いMTAはもう使わなくてもいいかもしれないですね。
プロルートMTAとか何万もしますもんね・・・。
話はそれますが、ちょっと気になったのがMethodsに書いてある
Thereafter, teeth were restored with amalgam.
アマルガム修復なんですね。
イランではまだまだ主流なんでしょうか?
でもセラカル使う予算があるならCRも使えそうだけど・・・何でだろう?
二次カリエスになりにくいから?どうせ乳歯で抜け落ちるから?他国で余ってる在庫を安く買ってるとか?
うーん、何か理由があるんでしょうか?どなたか知っていたら教えて下さい。
適応例を見極めるのが大切
ただ何でもかんでもセラカルでOK!ってなわけでもなくて、ちゃんと残せる歯髄を見極める必要があります。
【考察】このような良好な結果を得られた理由として,本剤が歯髄為害性の少ない組成であることに加え,ケイ酸カルシウムの硬組織誘導が期待できること,操作性に優れるため処置時間が短くて済むことなどが考えられま す。しかし一方で感染歯髄における抗菌作用はあまり期待できないため,とくに露髄症例において歯髄に感染があるかといった症例の見極めが必要であります。
MTA系覆髄材 セラカルLCの臨床応用報告 (2)
DPC for small non-contaminated pulp exposures using either TheraCal or MTA were randomly performed in symmetrical molars.
Direct pulp capping in primary molars using a resin-modified Portland cement-based material (TheraCal) compared to MTA with 12-month follow-up: a randomised clinical trial.
ちゃんと感染が疑われない歯髄を選んで覆髄してますよね。
露髄面が大きかったり、出血が止まらない場合は、セオリー通りに歯内療法に移ったほうが良さそうです。
その点セラカルは素早く操作できるので、歯髄が感染してしまうリスクを減らすことができます。
どうですか?早くないですか?
セラカル出して照射して終わりなので、まるでCRかのような操作感ですね。
歯髄が感染してしまわないよう素早く処置できちゃうんです。
ただ、歯髄を感染させないためには、やっぱりラバーダムが一番なんですよね。
特に小児の場合、唾液の量が半端じゃないですしね。
皆が皆じっとして処置を受けれるわけではないですし、簡易防湿にも限界があります。
ラバーはぜひ身につけたいテクニックですね。
「ラバーは全然しないから無理〜!」って方は、やり方を動画でまとめてあるので一度ご覧頂ければと思います。
そもそも子供の相手が苦手だー!っていう方はこの本を読んで見て下さい。
操作性が高いセラカルを使って、簡単かつ積極的に歯髄を残して行きましょう!
参考リンク
セラカル
MTA系覆髄材 セラカルLCの臨床応用報告
(日本小児歯科学会会員専用)
Direct pulp capping in primary molars using a resin-modified Portland cement-based material (TheraCal) compared to MTA with 12-month follow-up: a randomised clinical trial
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