先日、こんなニュースが目に入りました。
虫歯治療後に2歳女児死亡 福岡県警が捜査
福岡県内の小児歯科医院で昨年7月、女児(2)が局所麻酔で虫歯治療をした直後に容体が急変し、低酸素脳症で死亡していたことが19日、遺族側への取材で分かった。県警は、治療との因果関係や急変後の処置に問題がなかったか調べている。
亡くなったのは県内に住む山口叶愛ちゃん。夫と共に付き添っていた母親(25)によると、昨年7月1日夕、歯茎に局所麻酔をして治療を終えた後、体が硬直し目の焦点が合わなくなった。院長は「よくあること」として医院内で休むよう言ったが、異変から約45分後に激しいけいれんを起こしたため、車で近くの病院に連れて行った。容体は回復せず、救急搬送された大学病院で同3日に死亡した。
医院の代理人弁護士は「亡くなったことはお気の毒に思う」とした上で「院長が様子を見た際には脈も正常で、救急搬送が必要な状態ではなかった。(運ばれた)病院の資料がなく、法的責任を判断できない」としている。
引用
http://www.sankei.com/west/news/180119/wst1801190083-n1.html
とても悲しいです。
ご冥福をお祈り申し上げます。
この死亡事故に関して、小児歯科学会から発表された資料は3つ。
それぞれ抜粋して見ていきたいと思います。
小児歯科学会は怒っている?
まずは1つ目。
福岡県で発生した歯科治療後の2歳児の死亡事故について
(略)
本件の歯科治療と患児の死亡との因果関係は現段階では不明ですが、報道に際し取材を受けた歯科医師の発言には「ラバーダム防湿は小児に使用しない」というものや、コメンテーターの発言に「本件の治療を行った歯科医師は小児歯科の専門医である」という誤った内容のものがあり、適切な歯科治療を受けている子どもの保護者が不安を募らせています。
今回の取材に対応した歯科医師の誤った発言は、小児歯科医療に専心している小児歯科専門医にとって非常に迷惑であり、患者さんと歯科医師との信頼関係を壊すことになりかねません。
一部報道関係者には当学会として、内容の訂正を求めて文書にて抗議いたしました。
今後、このような悲惨な事故の発生を防止するため、当学会として医療安全に向けた一層の努力を図り、会員への注意喚起と研鑽の機会を提供していく所存です。引用
http://www.jspd.or.jp/contents/common/pdf/gakkai/20180117_01.pdf?file_id=205
なんというか、怒ってる感じが伝わってきますね。
ラバーダムは小児の治療にはほぼ使います。
小児歯科と書いてる歯医者=専門医とは限りません。
僕もそう思います。
それをテレビ等で否定された訳ですから、小児歯科学会の人達が怒るのも無理ないですね。
ラバーダムに関して
2つ目の資料はラバーダムですね。
国民の皆様へ
小児におけるラバーダム防湿法の使用について
ラバーダム防湿法は、薄いゴムシートに小さな穴を開けて、その部分から歯を露出させて歯科治療を行う方法です。
本法は、全国の大学病院の小児歯科や、小児歯科専門の医療機関では、小児のむし歯治療等において使用されています。
ラバーダム防湿法を使用した場合、治療中に薬液や切削片が口腔内へ侵入するのを防ぎ、また術野への唾液や細菌の侵入を防ぐことによって、清潔な状態を保ち、治療精度を向上させることが可能となります。
また、治療用器具の吸引、誤嚥防止や術野の明示および器具の操作性向上による治療時間の短縮、切削器具などや薬液などからの軟組織の保護が期待できます。
さらに、ラバーダム防湿法は、治療中の気道、呼吸への影響はほとんどなく、さまざまな臨床研究においてその安全性が証明されております。
小児の歯科臨床において、ラバーダム防湿法は安全で良質な医療を提供するために必要不可欠な処置と言えます。引用
http://www.jspd.or.jp/contents/common/pdf/gakkai/20180117_03.pdf?file_id=205
ラバーダムの大切さがわかりますね。
よくまとまっていたので全文引用しました。
大人なら耐えれる処置でも、子供は我慢できないことが多いです。
嫌な刺激から子供を守ってくれるラバーダム、超大事。
というか出だしが凄いですね。
国民の皆様へって……
それだけ誤解が生まれてしまったってことなんでしょうか?
押さえつけての治療
3つ目は押さえつける治療ですね。
日本小児歯科学会における身体拘束下での歯科治療に関する基本的考え方
(厚生労働省の「身体拘束に対する考え方」を前提として)(略)
そこで、当学会において身体抑制の対象とする患者について以下のように定める。
① 低年齢または何らかの障害等で身体拘束が歯科治療上の安全を確保するために必要であると認められること
② 身体抑制の必要性ついて、歯科医師および歯科衛生士等複数の者が認めること
③ 身体抑制の方法や時間などを患者本人または保護者にわかりやすく説明し、了解を得ること
④ 抑制中に術者以外に安全を見守る者を置くこと
これらの用件を満たした患者を身体抑制下で診療する対象患者とする。
なお、身体抑制には、レストレーナー®(身体抑制網)やタオル、抑制ベルト、術者や補助者による徒手抑制がある。引用
http://www.jspd.or.jp/contents/common/pdf/gakkai/20180117_02.pdf?file_id=205
歯が痛い。ご飯食べれない。夜も眠れない。
でも治療はイヤ、じっとできない。
こういう時、押さえつけての治療になります。
だって痛いままじゃ普通の日常生活を送れませんからね。
原因となる歯だけでも治療します。
じゃあどんな時なら押さえつけるのか?
という条件に関しての記載ですね。
僕も正しいと思います。
というか、僕はここに書かれてるような状況でしか押さえつけての治療はしないですね。
患者さん側にも正しい知識を
というわけで、小児歯科学会から発表された資料を紹介してみました。
「国民の皆様へ」という出だしからも分かる通り、歯科医師側だけではなく患者側にも理解を求めるような訴えかけになっています。
小児歯科ではラバーダムは使うし、場合によっては押さえつける治療もします。
ご理解頂けると幸いです。
コメント